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ふるきミニエチュア

古き小画

宮本 百合子

「小樽新聞」1924(大正13)年1月14日~3月9日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 70,298 字 · 140 页

青空文庫

卓子についているスーラーブを認めると、彼は、陽気な風で、手を延ばした。

「どうです! 見事な腕を見せて貰えましたな。お疲れでしょう。儂は今、兵卒共の慰労に一廻りして来たところだが――」どっかりとスーラーブの傍に腰を卸した。

「バーマンは?」

「さあ」

スーラーブは、同じアフラシャブの腹心でも蒼白い無感動のバーマンより、フーマンロサーに人間らしい天性の率直さを感じていた。フーマン自身もそれを知り、何か状態が複雑になりかけると、自分の単純な激情に駆られる性質を恐れるように、冷静な、狡智に長(た)けたバーマンを傍に持とうとする。今、バーマンのいないこととて、スーラーブに希わしい機会なのだ。彼は、フーマンに盃をすすめ、自分も一啜りしながら云い始めた。

「まあ、とにかく今日は余り成績も悪くなかったようだが。――一体、あのイラン方の戦士は誰かね」

フーマンは、赧い顔を手の平で一撫でし、酔いが発したように、卓子にがっくりよった。

「さてね。儂にも判りませんな」

「卿などは、幾度もイランの将等と、手合せしているのだから判らないとはいえない。――誰だろうな。――また、明日のこともあるから訊くのだ」