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ふるきミニエチュア

古き小画

宮本 百合子

「小樽新聞」1924(大正13)年1月14日~3月9日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 70,298 字 · 140 页

青空文庫

ルスタムは、辛うじて、定規の礼を行い、頭を擡げると同時に口を切った。

「王、唐突な願いですが、何卒御所持の、あの血どめの秘薬を、御恵み下さい。只今ギーウに願わせましたが、御理解なかったと見え、御仁慈にあずかり得ませんでした。早急に願わしいのです。何卒」

カーウスは、ルスタムの真正面に立ちはだかり、灰色の冷やかな眼に疑深い色を煌めかせて云った。

「卿の推察は珍しく誤った。ギーウに薬を渡さなかったのは、理解しなかったからではない。最もよく、未来まで洞察したからだ」

「王! 後々の責任と感謝とは、このルスタムが余生の全部を捧げて尽します。お耳に入れたでしょうが、思いがけないことで、儂はいると知らなかった自分の息子は――儂の手で刺してしまった。儂自身のためなら、決して斯様な願いは敢てしませぬ。わが命は王のものです。然し、彼奴は生きのびさせてやりたい。儂の苦しみを、せめて王の秘薬にすがって癒せるなら癒させたい。後程、事情は詳細に申上げます。どうぞ、今は一粒、あの薬をおさき下さい」

ルスタムは王の傍を通って天幕の奥の調度の方に行こうとした。

「こら!」

カーウスは、手を延して遮った。