轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ふるきミニエチュア
古き小画
宮本 百合子
「小樽新聞」1924(大正13)年1月14日~3月9日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 70,298 字 · 140 页
そして、胸墻(きょうしょう)の下に取つけた石の、浅い腰架に腰を卸した。下を瞰下(みおろ)すと、遙に小さく、城外の村落を貫き流れる小川や、散らばった粘土の家の平屋根、蟻のように動く人間や驢馬(ろば)の列が見える小川の辺りでは、女が洗いものでもしているのか、芽立った柳の下で、燦く水の光が、スーラーブの瞳に迄届いた。遠く前面を見渡すと、緩やかな起伏を持った丘陵は、水気ゆたかな春先の灌木に覆われ薄臙脂(えんじ)色に見える。その先の古い森林は、威厳のある黝緑(ゆうりょく)色の大旗を拡げ立てたように。最後に、雪をいただいた国境の山々が、日光を反射し、気高い、透明な、天に向っての飾りもののように、澄んだ青空に聳え立っている。
肱をつき濁りない自然に包まれているうちに、スーラーブの心は、白雲のように、音もなく、国境の山並の彼方に流れた。そして茫漠としたイランの空の上で、降り場所を求めるように円を描いて舞う。けれども、彼の心を、地上から呼びかけて招いてくれるものもなければ、落付き場所を教えてくれてもない。スーラーブは、父の名を知らなかった時、それさえ解ったら、どんなにさっぱり、心強いことだろうと思い込んでいた。