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ふるきミニエチュア
古き小画
宮本 百合子
「小樽新聞」1924(大正13)年1月14日~3月9日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 70,298 字 · 140 页
下では群臣が、拳を振りあげ、声を限りにあれよあれよと叫んでいる。するうちに、一羽の鷹がどよめきの裡でも特に鋭い鷹匠の懸声をききつけたのか、さっと翼を張って下方に向った。拍子に、ぐらりと玉座が傾いたかと見る間に、王は籠からこぼれる棗(なつめ)のように、脆くも足を空ざまにして墜落した。
「その機勢(はずみ)に、王は何の積りか、無花果(いちじく)の実を一つ、確かり握って来られました。汁で穢れた掌を開いて潰れた実をとってあげようとしても、片手で挫けた腰を押え押え、いっかな握りしめた指を緩めようとされず、困ったことでございました。
『あの鷹匠奴! あのしぶとい奴等め!』と息も絶え絶えに罵られましたが、流石に愧じてでしょう。十日ばかりは、お気に入りの婦人でさえ、お傍へ許されませんでした。先刻申上た縞瑪瑙も、実は、煎薬の匂いで噎(む)せそうな臥床の中でおもとめなされたような訳で。――一事は万事と申します」
商人は、意味ありげに、声を潜めた。
「イランは、ルスタムという柱で持っております」スーラーブは自分の内の考えに領せられ、笑いもしなければ、見えすいた追従を悦ぶ気振もなかった。