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ふるきミニエチュア
古き小画
宮本 百合子
「小樽新聞」1924(大正13)年1月14日~3月9日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 70,298 字 · 140 页
シャラフシャーやアフラシャブの宮廷から先発して来たフーマン等と進路のことにつき、または戦略に関し、長時間に亙って協議した後、スーラーブは、新鮮な息を吸おうとして、広間の歩廊に出る。が、爽かな空気を呼吸するどころか、彼は、丁度下の出立の仕度で大混雑の広場から舞上る、むせっぽい砂塵を浴びた。
晩春の晴天つづきで、広場は乾ききり、地面は一面薄黄く、ボガボガになっていた。そこに真上から日光に照され、無数の男が、立ったり据たり、各自の仕事に熱中していた。或る者は、足の間でカチカチ鳴る金物を押え、頻りに弄り廻している。或る者は、出来上ったばかりの鞍をその手に持って立ち上り、パンパンパンパン好い音を響かせて塵を払い、直下にしゃがんでいる男から、
「ヘーイ! 目を開けろ! 泥をかけてくれるにゃあ未だ早いぞ!」と怒鳴られる。どっという陽気な笑い声。彼方の隅に五つ並べて築かれた急造の石の大竈からは、晴れた空に熾な陽炎を立てながら、淡い青い煙と麦の堅焼パンのやける香ばしい匂が漂って来た。それに混って、馬の、遠くから来る、かん高いいななき。何処かで重い物を動かしているらしく低い、調子の揃った、力の籠った懸声も響いて来る。