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ふるきミニエチュア

古き小画

宮本 百合子

「小樽新聞」1924(大正13)年1月14日~3月9日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 70,298 字 · 140 页

青空文庫

彼の、疲労でざくざく鳴る耳に、この城に珍しいなまめいた音楽が聞えた。彼は一言も口を利かず、侍僕に案内させて、城内に入った。

城の広間でルスタムは、紅海の近くから来たという黒人娘の芸当を見ていた。妙にキーキー鋭い音の胡弓と、打込む重い鼓の響に合わせて、真碧い色に髪を染た娘達はぐっと、体をそりかえらせた。そして、手足にはめた黄金の環飾りをチリチリ鳴らし、何か叫んでぼんぼん、ぼんぼん幾つもの球を巧に投上げては操つって見せる。積み重ねた座褥にもたれ、白髭を胸に垂れ真面目な顔をしてそれを見物していたルスタムは、殆ど同じことが数番繰返されると、倦怠を感じ始めた。これが済む迄と思っていたところへ、思いもかけずギーウの到着が知らされたのであった。

ルスタムは、赤ら顔に輝く二つの大きな眼に何ともいえない悦びの色を浮べた。彼はすぐ席を立ち上った。そして、朽葉色の絹の寛衣の裾をゆすって真直に芸人等の前を突きり歩廊に出た。二人は、歩廊の端で出会った。ルスタムは、何も云わず、むずとギーウの肩を掴んだ。ギーウも我知らず手を延してルスタムの左手を執った。

糸杉の葉かげのうつる歩廊の甃(しきいし)を、再び広間の方に歩きながら、やがて、ルスタムが云った。