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ふるきミニエチュア
古き小画
宮本 百合子
「小樽新聞」1924(大正13)年1月14日~3月9日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 70,298 字 · 140 页
二十六
ルスタムは、顔を背向(そむ)けるようにして低く呟いた。
「そやつの年頃が、こじつけると、丁度卿も知っているあのサアンガンのことと符合する。風体も何だかあの辺の者らしいではないか」
「ふむ……」
ギーウは、まといつきそうにする踊娘の一人をうるさそうに片手でどけた。
「――然し、変ではないか。あの時のことは何の実にもならなかったのだろう? 俺はそうきいたと覚えているが……」
「彼方に遣った使者は、そういう返事を持って来た。そのままにしていたのだが」
ギーウは、暫く沈黙した。そして考えた後、情のこもった調子で云った。
「何にしろ、こういう処にいるのはよくない。よい折だ。出かけよう」
「――出かけるのを強ち拒むのではないが、先に控えていることがいやだ。――俺は、多くの戦もしたが、まだ、敵か味方か判明せぬ者を殺したことはない」
ギーウは、一言一言の言葉で、がっしりしたルスタムの老いた肩を優しくたたくように云った。
「それもこれも、俺は、卿の退屈すぎる境遇のさせる業と思う。卿がありもせぬところにまで己の種を求める心根を察しると同情を禁じ得ぬが――余りよろこばしいことではないぞ。