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こてんふう

古典風

太宰 治

「知性」1940(昭和15)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,400 字 · 21 页

青空文庫

F

てるは、解雇された。美濃とのあいだが露見したからでは無い。ふたりは、ひとめを欺く事には巧みであった。てるは、その物腰の粗雑にして、言語もまた無礼きわまり、敬語の使用法など、めちゃめちゃのゆえを以て解雇されたのである。

美濃は、知らぬ振りをしていた。

三日を経て、夜の九時頃、美濃十郎は、てるの家の店先にふらと立っていた。

「てるは、いますか? 僕は美濃です。」

出て来たのは、眼のするどい瘠せがたの青年であった。勘蔵である。

「あ、」勘蔵は屹っとなって、「てる坊!」と奥のほうへ呼びかけた。

「しつれいします。」そのまま美濃は、店先から離れて、蹌踉と巷へひきかえした。ぞろぞろ人がとおっていた。

息せき切って、てるが追いかけて来た。美濃のからだに、右から左からまつわりつくようにして歩きながら、

「え? なぜ、来たの? あたしは、手癖がわるいのよ。追い出されたのよ。あたしの家、きたなくて、驚いたでしょう? でも、おねがい、ばかにしないで、ね。家の人たち、みんなやさしいのだもの。一生懸命やっているのよ。笑っているの? なぜ、だまっているの?」

「君には、おむこさんがあるのだね。