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こぼく
古木
豊島 与志雄
――近代説話――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,648 字 · 24 页
「あなたたちは、何を言ってるのですか。何がいるのですか。いつまでも眠らないで、何を見ているのですか。」
千代子が答えました。
「あすこに、椎の木のなかに、フクロウがいるって、幹夫さんが言いますのよ。ねえ、お母さま、お母さまにも見えますの。」
久江は思わずつりこまれました。
「どこにいるのですか。」
幹夫が元気よく答えました。
「高いところ……いちばん上の、大きな枝にいますよ。」
久江は見上げました。こんもりした茂みで、梟の姿などは見分けがつきませんでした。然し梟といえば、夜なか、その声が聞えることがあって、茶の間から一同、耳を澄したことも何度かありました。
「あたくしには見えないわ。」と千代子が言いました。「鳴き声も聞えないじゃありませんか。」
「さわがしいから、鳴かないんだよ。」
幹夫の言う通り、遠いどよめきが、へんにむし暑い大気のなかに伝わっていました。
そのどよめきが、次第に盛り上ってきて、火災は一粁ほど先まで迫り、昼間のように明るくなりました。明るくなると却って、梟の姿はもう幹夫にも見分けられなくなりました。
屋敷内を見廻って戻って来た巳之助は、その話を聞くと、子供たちに言いました。