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あいずのはた

合図の旗

宮本 百合子

「婦人画報」1946(昭和21)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,036 字 · 8 页

青空文庫

けれども、私たちの現実は、どうであろう。私たちに、もし帰る家庭があるならば、それこそ私たち自身の社会的な努力によってその構造を辛くも守りたてて来ているからではないだろうか。戦争中、女はあんなに働かされた。働かされ、又働き、そしてその働きによってこそ、疲れて夕刻に戻る家路を保って来ていたのではなかったろうか。

良人を、兄を、父を、戦争で奪われた日本の数百万の婦人は、身をもってこの事情を知りつくしている筈だと思う。

戦争のない日本を創りたい。この痛切な願望を、胸に抱かない一人の婦人もあり得まい。戦争をひきおこす日本の反動勢力を、私たちの社会から排除する、ということは、架空の道を通って実現することではない。今ここに提出されているいくつかの問題を、事実上私たちの発意と、集結された民主力とで、一歩ずつ解決に押しすすめてゆく、その一足が、私たちの眼路はるかに、広々とした民主日本、封建から解かれ、美しく頭をもたげた日本女性の立ち姿を予約しているのである。

民主戦線の結成ということは、政治めいた言葉と響いているが、私たちは、自分たちの一生が又とくり返しようもない、いとおしいものであることを犇々と感じている。