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よしだしょういん

吉田松陰

徳富 蘇峰

「国民之友」1892(明治25)年5月~9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 135,622 字 · 269 页

青空文庫

これ有り、かたがた非常の功を立つべしと心掛け候処、去夏以来異国の軍艦近海へ渡来致し候趣承り及び、深く心痛の余り西洋へ渡り国々の風教軍備等悉く研究致すべしと修理とも議論に及び候処、当今の形勢彼を知る事急務にして、間諜細作を用い候外良策これ無く候えども、重き御国禁に付き官許はこれ有るまじく、自然漂流の体に致し成し事情探索の上、立帰り候わば専ら御国のためにも相成るべき旨申す間、兼ての内存と符合致し頻りに西洋周遊の念差起り、去秋長崎表へ渡来の魯西亜船へ身を托すかまたは漁船を雇い渡海すべしと九州筋遊歴の積りにて修理方へ暇乞いに罷り越し候処、その胸間を察し送別の詩作を贈る。その詩に曰く、

この子に霊骨あり、久しく※躄の群を厭ふ。衣を振う万里の道、心事いまだ人に語らず。すなわちいまだ人に語らずといえども、忖度するにあるいは因あらん。行を送りて郭門を出づれば、孤鶴は秋旻に横たわる。環海は何ぞ茫々たる、五州は自から隣をなす。周流して形勢を究めよ、一見は百聞に超ゆ。智者は機に投ずるを貴ぶ、帰来はすべからく辰に及ぶべし。非常の功を立てずんば、身後に誰か能く賓せん。

志を通し候に付き、いよいよ憤発致し長崎表へ立越し候えども、一旦退帆後にて便を得ず空しく帰府致し候。