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よしだしょういん
吉田松陰
徳富 蘇峰
「国民之友」1892(明治25)年5月~9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 135,622 字 · 269 页
彼は信念堅固、道心不抜なり。彼自から信ずる頗る厚く、自から為す所、言う所、一として自から是認せざるはなく、則ち自から反して縮んば千万人といえども、吾往かんの気象なり。彼は真理の存在を信ぜり、精神の不朽を信ぜり、天を信ぜり。その「身は家国に許し、死生は吾久しく斉しうす」といい、その「身はたとえ武蔵の野辺に朽ちぬとも留め置かまし大和魂」といい、「我、今国のために死す、死すとも君親に背かず、悠々たり天地の事、感賞は明神に在り」というが如き、みな直覚的宗教心を顕彰するものにあらざるはなし。彼は誠実なり、恐るべきほど誠実なり、「至誠にして動かざるは、古より未だこれ有らず」といい、「天下は大物なり、一朝の奮激の能く動かす所に非ず、それただ積誠これを動かし、然る後動くこと有るのみ」というが如き、その真気の惻々として人を動かすを知るべし。
彼既にかくの如し、これ豈に天産的の革命家にあらずして何ぞや。軽浮にして慓悍なるもの、慧猾にして狡獪なるもの、銭を愛するもの、死を恐るるもの、愧を知らざるもの、即ちハレール、セイーの徒の如きは、以て革命家の器械となるを得べし。然れどもその主動力たるものは、一種宗教的殉道者の大精神あるを要す。