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よしだしょういん
吉田松陰
徳富 蘇峰
「国民之友」1892(明治25)年5月~9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 135,622 字 · 269 页
彼は曰く、「もし奉行余が言を聴き、今日の急務を弁知し、一、二の措置をなさば、吾れ死して光あり、一、二の措置をなす能わざるも、また赤心を諒し一死を許せば、吾生きて名あり、また酷烈の処置に出で、妄りに親戚朋友に連及せば、吾言うに忍びずといえども、昇平の惰気を鼓舞するに足る、皆妙」と。
彼が獄中の生涯は、彼が獄中より諸友に与えたる書中に詳かなり。彼は死と同居しても、なおその飛揚跳梁の精神を全く棄てざりしなり。彼はその友人に向って、種々の事を言い送れり、あるいは唐筆を入れくれよといい、あるいは『孫子』一巻を送りくれといい、あるいは金子の入用を申遣り、またあるいはその郷里の友人に向ってその消息を通ぜざるを責め、その来信を促したり。彼れ曰く、「艱難辞せずといえども、安楽もまた自ら好に御坐候」と、これ実に彼が獄中の生涯を言い顕したるものなり。何となれば彼は獄中に多くの知己を得、従って多くの便宜を得たればなり。彼は獄中にて聴きたる大獄に関する諸有志の身の上につき、その人物につき、その出来事につき、これをその獄外の友人に告げたり。彼はその身は獄中に安坐するも、その心は一日も平静なる能わざりしなり。