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よしだしょういん
吉田松陰
徳富 蘇峰
「国民之友」1892(明治25)年5月~9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 135,622 字 · 269 页
彼も自らその身の如何に落着するかを知らず、ただ曰く、「三奉行大憤激して吟味することにも相成り候わば、小子深望の事に候えば、その節株連も蔓延も構わず、腹一杯天下の正気を振うべし。事未だここに至らざれば、安然として獄に坐し夫の天命を楽しむのみ」と。彼は実にその身の如何に落着するかを知らず、ただその友人に向って、「天下の事追々面白く成るなり。挫ける勿れ、折ける勿れ、神州は必ず滅びざるなり」と言い贈れり。
彼は獄中において朋友に富めり。その同獄の長は、沼崎某という者なり、彼もまた初めより松陰の名を知り居れり。またその別獄には、堀江克之助、鮎沢伊太夫らの水戸藩士あり、京都鷹司家諸太夫なる小林民部太夫あり。彼らは獄中にて常に書翰を取遣り、あるいは往を談じ、あるいは来を語り、殊に死の眼前に迫るをも打忘れて、将来の経綸に余念なきものの如し。
彼は獄中において多少の新見聞を広めたり、何となれば天下の新聞は実に獄中に集れるなり。故にまた新見識を加えたり。その九月十二日高杉に与うる書中に曰く、「三人とも我を学んで、軽忽をやるな、吾は自ら知己の主、上に在り、然らざるを得ず。