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よしだしょういん

吉田松陰

徳富 蘇峰

「国民之友」1892(明治25)年5月~9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 135,622 字 · 269 页

青空文庫

その言は取捨せざるべからざるものなきにあらずといえども、その精神は何人も服膺せざるべからざる所なり。

彼れ年少気鋭、頭熱し意昂る、時事の日に非なるを見て、身を挺して国難を済わんとするの念、益々縦横す。惟うにその方寸の胸間、万丈の焔炎、天を衝く大火山の如くあるべし。知らず、何の余裕あれば、かくまで懇到慇懃、その諸妹を教誡するの文字を作りたるぞ。惟うにこの二個の書簡は、分明に家庭における松陰を描き出して遺憾なかるべし。

彼が檻車江戸の死獄に送られんとするや、その諸妹に与えて曰く、「心あれや人の母たる人達よかからん事は武士の常」と。これ勇士はその元を喪うを忘れざる大決心を、彼らに鼓吹したるものにあらずや。而して彼はさらに左の如き書簡を諸妹に与えたり。

拙者義、この度江戸表へ引かれ候由、如何なる事か、趣は分り申さず候えども、何れ五年十年帰国相成るべき事とも存ぜず候えば、先ずは再帰仕らずと覚悟を詰めし事に付き、何かと申置くべき処あるべきように候えども、先日委細申し遣わし置き候故、別に申すに及ばず候。拙者この度仮令一命差捨て候とも、国家の御為に相成る事に候えば本望と申すものに候。