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ノンセンス

呑仙士

夢野 久作

「モダン日本 6巻2号」1935(昭和10)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,104 字 · 5 页

青空文庫

大至急に酒を命じて二階に上った。

それから二階で又盛んに飲んで、歌って、死生の契りを固めているうちに、とうとう飲み潰れて二人ともグウグウ寝てしまった。

あくる朝松石君が眼を醒ますと、傍に知らない男が寝ている。ハテ、何処の宿屋に泊ったのか知らん……と思って天井や床の間を見廻すと、たしかに自分の家である。

松石君は仰天して二階から駈け降りた。台所で赤ん坊を背負って茶漬を喰っている細君を捕えて詰問した。

「二階の男はアリャ何だい」

細君も仰天した。

「……まあ……アナタ御存じないの」

「知るもんか。あんな奴……」

「あら嫌だ。昨夜、貴方が親友親友って言って連れて来て、二階でお酒をお飲みになったじゃないの。そうして仲よく抱き合ってお寝みになったじゃないの」

「馬鹿言え。俺あ今朝初めて見たんだ」

細君は青くなってしまった。

「まったく御存じないの」

「ウン。全く……」

そんな問答をしているうちに、松石君はやっと昨夜の事を思い出したので、思わず頭を掻いて赤面したと言う。

「困るわねえ。貴方にも……まだ寝ているんでしょう」

「ウン。眼をウッスリと半分開いて、気持よさそうに口をアングリしていやがる」