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わせいつばきひめ
和製椿姫
大倉 燁子
「仮面 三巻三号」1948(昭和23)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,221 字 · 19 页
「ええ、二度ばかりお目にかかりましたわ。大層お美しい方ですのね」
春光は苦笑いして、「美耶子が、昨夜浚われてしまったんですよ」
「へえ、奥様が?」
「そうです、妻がです」
「浚われたということがどうしてお分かりになりますの」
「美耶子はあなた、重病で寝たっきりだったんですよ。独り歩きも出来ない大病人が消えて失くなったんですから、浚われたとしか考えられないじゃありませんか」
私は黙って彼の顔を見た。青い頬にいく分か興奮して血の気がのぼっているが、その眼は充血して昨夜来の苦悶をありありと現わしている。いつも奇麗にわけている頭髪も、話をする間に指でがりがり掻くので、もしゃもしゃになっていた。
美耶子の前身が前身だけに、彼の煩悶には複雑なものがあった。嫉妬の交った感情もあっただろうし、体面を重んじる彼としては、まるで顔に泥を塗られたような不愉快さもあったろう。世間へ知れては面目ない、何とかして誰にも感付かれないうちに連れ戻さなければならない、と、彼は焦っていた。
「もっと委しく話して頂けないでしょうか。奥様は御重体でいらしたとすると、どういう御病気だったんですの?」