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といにこたえて

問に答えて

宮本 百合子

「文芸通信」1934(昭和9)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,571 字 · 9 页

青空文庫

小さいものの観方をしか持たない人間程早く人生に飽きて退屈すると同じ理由で、そういう作家達にとっては、ある年齢が来ると、新しいことということ、新しい感情というものが一つも毎日の生活の中で発見されなくなって来る。「ああこれもあの時のものと同じだ」「ああこんなことはもう百も承知の事だ」世の中の現象が反覆としてだけ映って来る。そして何時も若々しい感情の波だちをもって人生に生きるものを、その幼稚さで嘲笑するのであるが、(そしてこのことは日本の文筆家の中に残されている強い封建制の現れとも見られるのであるが)若し我々が本当に動的な世界観をもつリアリストであるならば、作家として倦怠に陥入ることは殆んどあり得ないことと思う。モウパッサンが後年何故あのような現実の平凡な反覆という文句を繰返して苦悩したかということが、ここで考えられて来るのである。

彼の秀れた教師フローベルはモウパッサンにこういって教えた――「世の中に石ころでも二つ全く同じ石ころというものはない。それを書き分けろ」――と。モウパッサンはそのように努力した。けれども表面に現れる現象だけを追究して、違ったもの違ったものと求めても全くそこにはモウパッサンをして歎かしめたような反覆しか認められず、やがて絶望へ逐い込まれるであろうということはよく分る。