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ぜんあくりょうめんねずみこぞう

善悪両面鼠小僧

国枝 史郎

「ポケット」1925(大正14)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,231 字 · 21 页

青空文庫

「さて和泉屋」と顔を傾げて云い出した。

「私はお前が賊だと知った。知ったが捕らえるつもりはない。お前の気象が面白いからだ。……ところで私の今日来たのは決して与力としてではない。友人として遣って来たのだ。そこで私は思い切ってお前に一つ忠告しよう。和泉屋お前湯治に行ってはどうだ」

「へ、湯治でございますって?」

次郎吉は不思議そうに眼を上げた。

「そうさ、その肘の治療にな」

「へえ、なるほど」と上げた眼をまた膝頭へ落してしまう。

「どうだ和泉屋、湯治に行くか」

「行ってもよろしゅうござりましょうか?」

「つまり江戸から足を抜くのさ」

「……でも私がそうなりましたら、旦那の手落ちにはなりますまいか?」

「俺が承知で湯治へ遣るに何で俺の手落ちになる。そんな心配は少しもない。……で、お前はどこへ行くつもりだ?」

「へえ、箱根へでも参りましょう」

「うん箱根か。それもよかろう。……ところで一つ訊きたいことがある」

「へえ、何でございましょう?」

「どうしてお前はああ自由に自分の体を変えることが出来る?」

「ああその事でございますか。これがネタでございますよ」

云いながら次郎吉は懐中から二つの薬瓶を取り出した。