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きつえんへき

喫煙癖

佐左木 俊郎

「北海タイムス」1931(昭和6年)9月、「河北新報」1931(昭和6年)10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,988 字 · 5 页

青空文庫

札幌の場末の街、豊平を出た無蓋二輪の馬車が、北を指して走っている砂利道を、月寒の部落に向けてがたごとと動いて行った。

馬車の上には二人の乗客が対い合って乗っていた。二人とも、いずれも身すぼらしい身装で、一人は五十近い婆さんであった。一人はやはり、同じ年ごろの爺さんであった。

爺さんは引っ切りなしに、煙草を燻らしていた。その煙がどうかすると、風の具合で、婆さんの顔にかかった。婆さんはそのたびに横を向いて、その煙を避けようとした。

「これはどうも、貴女の方へばかり、煙を吹きかけるようで……」

爺さんは軽く頭をさげながら言った。しかし、爺さんは、やはりそのまま煙草を吸い続けるのだった。

「煙がかかってようござんすよ。かまいませんよ。煙草の好きな方は仕方がございませんもの。」

婆さんは微笑をもって言うのだった。

「私はどうも、眼を開いている間は、煙草をどうしてもはなせませんのでなあ。」

爺さんはそう言って、今度は紺碧の大空に向けて煙を吐きあげた。

「煙草の好きな方は、夜中に眼を覚ましても、床の中で一服するそうですからね。」

「私のは、それはそれは、それどころじゃないんです。