轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

とらわれ

囚われ

豊島 与志雄

「早稲田文学」1915(大正4)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,848 字 · 42 页

青空文庫

彼はそれを追っかけるようにして思い浮べてみた。其処には自分自身に対するまた富子に対する、云い知れぬ腹立たしさがあった。彼は自分自身の何かを富子の掌中に握られているとはっきり感じた。そして彼女の肉体とその高慢とが、彼に漠然とした憤りと恐怖とを与えた。

彼はもう恒雄に対して何等の反感も軽侮も持ってはいなかった。彼は恒雄を自分と親しい所に置いて見た。そして……恒雄と富子と床を並べた姿を思い浮べて凝然とした。――恒雄と富子とは夫婦である。悩みながらも彼等は永久に夫婦の生活を破りすてることが出来ないであろう。

孝太郎は心が苦しくなって来た。彼は眼を閉じて凡ての想像を閉じてしまいたくなった。重苦しい動かす可からざるものに突然ぶつかったような気がしたのである。

彼は大きく眼を見開いて何かを睥みつめるようにした。それから急に顔、そして眼を蒲団に押しあてた。胸づまるような涙が眼に溢れてきた。

孝太郎はなるべく恒雄と富子との前を避けるようにした。彼等の前に落ち付いてじっと見つめている眼を置くのが、何となく自分自身にもすまないように思えたのである。

それでも恒雄は彼に他愛ない様子を見せようとしているらしかった。