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とらわれ
囚われ
豊島 与志雄
「早稲田文学」1915(大正4)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,848 字 · 42 页
「いいえあなたは御自分におし隱して被居ることがあるでしょう。あなたのうちにはもう、はじめにあなたが悩み悶えられたものが深く喰い入っています。あなたと恒雄さんとは互に心と心と相反して立っていられながら、あなたには恒雄さんが無くてはならないものになっているし、恒雄さんにはあなたが無くてならないものになっています。勿論そうあるのが本当でしょうけれど、あなた方は全く普通と違った悲惨な仕方でそうなられたのです。あなた方は全く出立が間違っていた。」
「それは私一人の罪ではありません。」
「でもなぜあなたは初めに過去を恒雄さんにうち明けてしまって、冷たい反抗の代りに熱い涙を示されなかったのです。私はずっと前に度々それをお勧めしたじゃありませんか。」
「恒雄は一度きいたらそれを許すような男じゃありません。あんな……あんな乱暴なことをする人ですもの。」
「それはあなたからも挑むんでしょう。」
「え!」
「あなたの高慢な執拗な眼付が恒雄さんをあんなにしたんです。……それに、自ら知らないであなたもそれを求めていらるるんです。」
富子は心持ち蒼ざめてきた。彼女は眉のあたりに細かい痙攣を漂わしながら云った。