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よんじゅうはちにんめ
四十八人目
森田 草平
「改造」1929(昭和4)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 56,183 字 · 112 页
「そうか!」と言ったまま、小平太は何とも返辞ができなかった。ただもう自分が糺明を受けているような気がして、胸は早鐘を撞くように動悸を打った。
「だが、女のために大儀を衍る」と、勘平はまたごろりと横になりながら言った。「考えてみると、気の毒なものじゃね。こうしてだんだん籾と糠とが撰り分けられるんだよ」
「そうだ、籾と糠とが撰り分けられるのだ」と、小平太はようようそれだけ言った。
勘平は言うだけ言うと気が納まったか、そのまますやすやと寝入りかけた。が、小平太はそうは行かなかった。夜着の襟に手を懸けたまま、長い間蒲団の上に起きて坐っていた。そして、口の中では、絶えず「籾と糠、籾と糠!」と呟いていた。
最初彼は相手が自分に当てつけるために、わざと庄左衛門の女の話を持ちだしたのだと思った。が、考えてみると、そんなはずはない。もしおしおのことを感づいていたら、そんな遠廻しに持ちかけるようなことは言うまい。勘平はそんな男ではない! で、おしおのことはまだ何人にも知られていない、それだけはたしかだ。が、それにしても、自分はもう二度とあの女に逢ってはならない。この間から四五日遠退いていたのを幸いに、このまま顔を見ないで行く! 不人情かはしらぬが、それよりほかに俺の取るべき道はない。