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よんじゅうはちにんめ

四十八人目

森田 草平

「改造」1929(昭和4)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 56,183 字 · 112 页

青空文庫

が、そう思っただけで、足はやっぱり向いた方へ歩いて、だんだん女の家に近づいていた。

何も知らないおしおは、例によって愛想よく男を迎えた。

「今夜は少しゆっくりしてもいいように、同宿の者へも頼んできた。晩くなったら、ここで泊ってもいいのだ。これでひとつお酒を購ってきてくれ」と、小平太は懐中から小粒を一つ出して渡した。

「まあ珍らしい、お酒を召しあがる?」と、おしおは可訝そうに相手の顔を見返したが、「でも、ゆっくりしていいとおっしゃるのは嬉しい。わたしもじつはこの間から聞いていただきたいと思っていることもある。では、すぐに行って参じましょ」と、いそいそとして出て行った。

ものの十分とは経たないうちに、おしおは五合徳利に風呂敷に包んだ皿を提げて戻ってきた。そして、しばらく台所でこそこそ遣っていたが、間もなく膳の上に肴と銚子とを揃えて持ちだした。小平太も火燵から這いだして、膳に向ったが、さされるままに一つ二つと盃を重ねた。日ごろは三杯と飲まぬうちにもう真赧になってしまうのだが、今夜はどうしたのやらいくら飲んでも酔いを発しない。薬でも呑むようにぐっと呑み乾しては、そのまままた猪口を差出すので、