轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

よんじゅうはちにんめ

四十八人目

森田 草平

「改造」1929(昭和4)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 56,183 字 · 112 页

青空文庫

気はないが、なおそこに一分の余裕を存しておくために、わざと太夫に逢わずに帰ってきたのではあるまいか。考えてみれば、兄新左衛門のいきさつを同宿の安兵衛に打明けようとして、とうとう打明けずにしまったのもそれだ。打明けずにさえおけば、いつでも兄とした約束を真実にすることができるというゆとりがある。不埓でも、狡猾いのでもない、俺はただそのゆとりが欲しかったのだ。今日でももし太夫に会って、いつぞやのような優しい言葉でも懸けられようものなら、俺はすぐにもこの人のために死にたくなる。それが怖ろしかったのだ!」

彼はもうそんな風にして自分の心を見詰めるに堪えられなかった。で、夜はまだ早いが、蒲団を敷いて一人でごろりと横になった。が、どうしても瞼眼が合わないで、とうとうまんじりともせずに一夜を明した。

十二

いよいよ十二月十四日、吉良邸討入の当日とはなった。その日は朝から霏々として雪が降っていた。月こそ変れ、先君内匠頭の命日である上に、今生の名残りというので、大石内蔵助を始め十余名の同志は、かねての牒合せに従って、その日早く高輪泉岳寺にある先君の墓碣に参拝した。