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こっかいとしょかんのこのごろ
国会図書館のこのごろ
中井 正一
「朝日評論」1950(昭和25)年11月号
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,130 字 · 5 页
一冊も本を読めない私の一日が、副館長の一日でもある。
よく、洪水の中が一番水に欠乏するように、図書館が、一番私にとっては本の読めない所となってしまったのである。
新年度の予算では、係のものは二週間、朝三時ごろまで寝ない日がつづいた。私も夜半まで皆の帰るのをただ一人待つ日が多かった。
赤坂離宮の全館に人一人いない夜、ただ一人(宿直は二人いるが)待っていると、しみじみ自分の肩に荷なっているものの重さを思い、ここに自分の命を捨てるのだという思いが、切々として迫ってくるのであった。
そして、どうしても切られた予算を盛りかえして、五百人の館員のよろこぶ顔を見なければと、音のしない闇に向かって、何か沸ぎるものを感ずるのであった。
あらゆる無理解をもつらぬいて、目に見えない未来に向かって、国の政治もよくなり、全日本の図書館(図書館法によってこれから生まれる一万の村々の図書館)に、わが館のカードとともに、良書が虹のように降りそそぐときがいつの日にか来ると、私たちは信じ、それに命を賭けることに日々を費やしているのである。
それは果たして単純な、愚直な、願いだけだろうか。