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こっきょう
国境
黒島 伝治
「戦旗」1931(昭和6)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,336 字 · 21 页
。それらの品々は、一時、深沢洋行の倉庫の中で休息した。それからおもむろに、支那人の手によって、国境をくぐりぬけ、サヴエート国内へもぐりこんで行った。
これは二重の意義を持っていた。密輸入につきものの暴利をむさぼるだけではなかった。
肉色に透き通るような柔らかい絹の靴下やエナメルを塗った高い女の靴の踵は、ブルジョア時代の客間と、頽廃的なダンスと、寝醒めの悪い悪夢を呼び戻す。花から取った香水や、肌色のスメツ白粉や、小指のさきほどの大きさが六ルーブルに価する紅は、集団農場の組織や、労働者の学校や、突撃隊の活動などとは、およそ相反するものだ。それをわざわざ持ちこんで行くのは意味がなければならなかった。社会主義的社会の建設に恐怖しているブルジョア国家の手がそこに動いていた。警戒兵たちがいまいましがっている支那人の背後には、×××がいた。
商品とかえられて持ちだされてきいたルーブル紙幣は、十二銭内外で、サヴエート国内でただ一カ所密売買をやっている、浦潮の朝鮮銀行へ吸収されて行った。
鮮銀はさらに、カムチャッカ漁場の利権を買ってる漁業会社へ、一ルーブル十八銭――二十銭で売りつけた。