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こくほう

国宝

宮本 百合子

「青年新聞」1949(昭和24)年3月1日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,575 字 · 4 页

青空文庫

政府や文部委員会が、こんどの議会で現実に解決する能力のないこんにちの教育問題から逃げる楯として、国宝再認識問題を過度に利用しないようにわれわれは監視しなければならない。

日本の「国宝」はあわれな歴史をもっている。明治維新の混沌期にもしフェノロサがいなかったら、当時の日本政府は価値のある過去の美術作品を外国美術館でしか見ることの出来ないものにしてしまっただろう。よそから教えられた日本美術の価値におどろいて、「国宝」をこしらえたのはいいが、「国宝」という封印だけがかたくされて日々の実際に適切な国家的な保護をうけていない「国宝」たちのきょうの運命こそ危機にある。「国宝」をもっていると財産税がかかり、贈りものにすれば贈与税、売れば譲渡税。その負担にたまらなくなった美術ボスたちがあれこれ細工をしているうちに、いつかは国外に消えてゆく率も多くなる。わたしたち人民は、自分たちの文化財として「国宝」をもっているのではない実状を自覚すべきである。一旦「国宝」にしたら、もう官僚機構の腐敗のままに薄情きわまる扱いをして恥も知らないやりかたは、何と「赤紙一枚」を思わせるだろう。