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とち

土地

豊島 与志雄

「青年」1924(大正13)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,719 字 · 22 页

青空文庫

」

平助と音吉とは毎日、鍬と鶴嘴とを肩にして荒地にやって来た。仕事は容易でなかった。以前森だったので、至る所に大木の切株があって、それが地下深く根を張っており、小松や灌木が生い茂り、雑草が高く伸びていた。それでも、灌漑の便がよかったので、開拓さえすれば、そのまま水田になることが出来た。荒地の片隅に、草木の根や石塊の塚が次第に大きくなるにつれて、拓かれた水田も次第に広くなっていった。昨年から拓かれた分には、もう稲苗が青々と植っていた。

平助は、自分の手で開墾された土地が、水に浸され馬に鋤かれ、村の娘達の唄声につれて稲苗が※(「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2-13-28)されるのを、にこにこした輝かしい顔付で眺めた。

「地所は旦那のものでも、おいらがそれを拓えたんだ。」

其処に彼と彼の一人息子との、激しい労働と生活とがあった。大地の黒い土が健かであると共に、彼等の力も健かだった。

「だが、こんな仕事つまんねえなあ。」

音吉がそう云い出したのは、村のおたかが遠い町の製糸工場へ行ってからだった。

「お前、そんなこと云って、旦那にすむと思うか。