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トソンラン
土城廊
金 史良
「文芸首都」1940(昭和15)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,752 字 · 52 页
と、今度は物でも毀れるように「どどしゃっ」と鈍重な音が響いて来た。
「んだ、又誰かが土幕をぶっ毀してるだな」徳一は忌々しそうに呟いた。
「誰だか」……元三は入口の方にずり寄って嵐の外を覗いてみた。顔に雨がざあざあ振りかかって始めはよく見えなかった。だがふと四五間先に影絵のように映ったものがある。それが激しい線を描いて動いているのだ。爺はぎょっとしていきなり飛び出した。泥にすべって前にのめりのめりつ這い上った。雨は容赦なしに降りかかる。風は悲鳴を上げて体にぶち当った。倒れかかるように後から抱き附いたが、男は怖ろしい激昂状態で土幕杙を振り上げ歯をきしきし鳴らしつつ、「放せ! 放せ!」と叫んだ。
吃男だったのだ。
「何事だよ!」元三爺は獅噛附いて泣き声を上げた。「うーふ、何事だよ!」
男はいよいよ狂乱に陥り両足を浮かして跳ね上った。そのはずみに二つの体は一緒にひっくり返ってずしゃりとぶっ倒れた。
「こらえるだよ、こらえるだ」元三は気違いのように叫んだ。
暴雨は益々烈風に煽られて二人の上をくるくる舞いしていた。
黄昏近くなって雨はあがり風は凪いだ。雨霧をかき分けてポプラの木立がしずしずと浮かび上った。