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トソンラン
土城廊
金 史良
「文芸首都」1940(昭和15)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,752 字 · 52 页
反射的に元三は熊のように土幕を這いずり出た。雨が裸の上体へふりかかるので、うふふ、うふふ奇妙な悲鳴をあげた。雨がもっとひどくなって目の先が見えなくなる。爺は土鍋を抱えて一層うふふ、うふふおどけた叫び声を上げつつ、泥の中を踏み分けながら麓の方まで下りて行った。川は雨に打たれて騒然としている。水の中へ片方の足を入れてみた。冷かった。辷りこけそうになってもう一つの足を突き入れ、少しずつはいって行った。きたない溝川なので成るべく深くまではいらねばならなかった。一尺位の深い所まで水に漬ると、二三度粟をといで水をごぼごぼ汲み入れ、再びうふふ、うふふ奇声を上げながら飛び出した。そのとたんに雨がざあっと土砂降りにかわり、一陣の野風がごうと吼え襲って来た。爺は一寸たじろいてよろめいたが、ふと上の方で婦が何か悲鳴を上げたように思えた。先達が婦を引きずり込んで小突き廻しているのに違いないと彼は考えた。それで大変だとばかり慌てふためき泥をかき分けながら小屋まで上って来た。だが雨と風の音ばかりますますつのり、先達の小屋は死のようにしーんとしていた。何だか急に張りの抜けたような淋しい気持だった。