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トソンラン

土城廊

金 史良

「文芸首都」1940(昭和15)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,752 字 · 52 页

青空文庫

爺はじっと立ちはだかって、抑えたような声で不機嫌そうに呟いた。

「姐さん、持って来ただよ」

中からは答えがなかった。

「あ――ええだ。こっちさ持って来るだよ」

声のする方を振り返って見れば、雨よけの所に黒い影が跼っている。

「へ、そこさいただね」

爺は相好を崩して婦の方へ近寄って行ったのである。

先達は最近特に気力が衰え支械を背負って街に出ても、倉庫の傍や或は流れ美しい大同江畔の破船の中に躯を横にする時間が多くなっていた。彼は日々の米代も碌には稼げなかった。眼は深く落ち凹み、首は目に見えて細くなった。婦は日を経ると共にだんだん彼に辛く当って来る。いつも食いしゃぶらんばかりに喚くのだった。

「皆、誰のせいかよ。この妾をどうしてくれるだよ」

そうする中に、元三爺は名実共に先達一家の命の親となった。けれどそれは先達にとっては非常に心辛いことだった。ふだんは押し黙って目だけをぱちくる彼だったが、胸の中にはいつも赤い焔が燃えている。今日も元三と肩を並べて帰って来たが、みちみち内心穏かではなかったのだ。米屋の前に足を止めて爺に粟を買わせる自分の姿。それは何という嫌なものだったろう。