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ざいがくりゆう
在学理由
豊島 与志雄
「日本評論」1938(昭和13)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,167 字 · 21 页
これまで生きてきたお蔭で、わたしにも相当世の中のことが分ってきた。恐ろしいのは習慣というやつです。」
そうなると、一座は黙りこんでしいんとなった。それがなお彼の饒舌を煽った。酔っ払いの早口と飛躍的な連想とで卓子を打叩かんばかりの勢だった。その後の議論を、茲に要約すれば――。
世の中の害悪はただ習慣だけだ。習慣だけが人をずるずる引崩す。習慣でないものは、凡て新鮮で、何等かの意義を持っている。習慣のうちでも、最も恐ろしいのは飲酒と喫煙だ。それは常住不断の習慣――中毒にまで立至る習慣――になり得るからだ。所有慾や色慾……窃盗や放蕩も、常習になって初めて害悪で、発作的なのは潔白と云ってもいい。殺人などでさえも、発作的なものであるから、それ自体として、多くは潔白なものだ。恋愛が害悪でない所以は、それが習慣になり得ないからだ。恋愛と習慣とは両立しない。だから恋愛はいつまでも害悪とならない。然し放蕩の方は、習慣になり易い。だから放蕩は害悪となる。最も習慣になり易いものは飲酒だ。だから飲酒は恐ろしい害悪となる。
こうした支離滅裂なことを、而もどこかに一貫した筋途のあることを、彼はしきりに饒舌りながら酒を飲み、酒を飲みながら饒舌りたてた。