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ざいがくりゆう
在学理由
豊島 与志雄
「日本評論」1938(昭和13)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,167 字 · 21 页
「わたしはもう駄目だ。こう癖がついちまっちゃあ、いくら酒を止めろたって、そりゃあ無理だ。うちの者たちは、それがよく分ってくれる。有難いものだ。早くに子供を拵えたお蔭だと、わたしは思ってる。有難いことだ。だが、息子だけには、同じ途を歩かせたくない。だからさ、ここでは、わたし一人だ。全く、親父だけだ。」
そして「おやじ」が熱すれば熱するほど、独身主義の「とりうち」は益々冷やかになっていった。
「それじゃあ、一層のこと、その厄介な息子も何も捨てちまって、独り身になって、吾々の仲間にはいったらどうです。気楽ですぜ。」
「おやじ」は何とも答えないで、水を浴びたように口を噤み、相手の顔を見据えた。それから、ふらふらと立上って、土間を、黝ずんだ木卓の間をぬって、帳場の方へ行き、空のビール瓶を一本取って来た。足元は危なげにふらついていたが、どかりと元の席に腰を下す拍子に、ビール瓶を卓子の上に立てた。
「わたしは議論はしない。この瓶が証拠だ。わたしの云ったことに間違いはない。わたしは誓いを守る。親父としての誓いを守るんだ。いよいよの時には、わたしにもどれほどの力があるか、この瓶が証拠だ。