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ざいがくりゆう
在学理由
豊島 与志雄
「日本評論」1938(昭和13)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,167 字 · 21 页
」
見ていた連中は微笑を浮べた。それは彼のいつもの癖だった。したたか酔ってくると、何かの調子に空のビール瓶を持出した。
いつのことか、彼は朝鮮人の喧嘩を見たことがあった。二人で何か云い争ってるうちに、一人が立上って、卓子の上の空のビール瓶を取るが早いか、相手の脳天めがけてすぱーりといった。どうした呼吸があったのか、ビール瓶は壊れもせず、相手は頭蓋骨が真二つになってぶっ倒れた、というのだ。
「また始まったぞ。」
片隅の浮浪青年は呟いて、それから声を高めた。
「よう、おやじさん、頼んますぜ。実地にひとつ、すぱーり、きれいにやって貰いたいな。」
「よろしい、相手さいあれば、いつでもやるよ。手練ものだ。」
本当にビール瓶を振上げて、腰掛けたまま身構えの様子で、すぱーりと、打下してみせた……。とたんに、激しい物音と共に、一同は飛上った。ビール瓶が彼の手からすべり脱けて、土間に砕け散ったのだ。
側の「とりうち」よりも、彼自身の方が更に仰天して、そしてぽかんとしていた。
「新発明だ。」と浮浪青年は叫んだ。「空のビール瓶が、爆弾の代りをするたあ思わなかった。おやじさん、威勢よくひとついこう。