轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ちじょう

地上

島田 清次郎

地に潜むもの

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 175,250 字 · 350 页

青空文庫

(こうした夜、こうして閑であることは、ああ何というかけがえのない恵みであろう!)彼女にとっては客席に出て男に接することは苦痛である。その苦痛を堪え忍ばねば生きてゆけない彼女である。彼女には夜は呪わしいものであった。(昼とても彼女には悦びをもたらしはしなかったが。)彼女は輝いた白光の下に厭あな気になって暫くの休息と平和を享受していたのだのに、時子と菊龍の会話が彼女のこの暫くの平和をも擾乱する。茂子は顔をあげて菊龍の円々した顔を流し見た。そのひとときの視線は、彼女が経て来た、通らねばならなかった、蹂み躙られ、虐げられねばならなかった、傷つけられて来た、そしてこれをじっと忍耐して生きて来た、生涯の泣き明かしても足りない怨恨の全力量が恐ろしい淵を開いて睨みつけたものであった。茂子は無意識だったが、無神経な菊龍も吾知らずぞうっとするほど恐ろしかった。

「茂子さん」

「なんですの」

「何んですの、今のあなたの顔は」

「わたしがどうかしましたの」

「どうかしましたもないじゃありませんか、何んですの、その顔は。怖かない顔をしてわたしを睨んでさ。わたしはお転婆ですけれど、あなたに恨まれる覚えはありませんよ。