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ちじょう
地上
島田 清次郎
地に潜むもの
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 175,250 字 · 350 页
それともあったら言ったらいいじゃないの」
「――」
茂子ははっとした。いかにも自分は恐ろしい顔をしていたらしく思われたからだ。彼女は顔を伏せた。(ありますとも、ありますとも、恨むだけの覚えはあなたにありますとも。あなたは知らない許りですとも!)むく/\と憤怒が逆流しかけたが、(菊龍じゃない、あなたはほんのはしくれ、仇敵のはしくれ)と何処か底に囁くものが彼女を再び沈鬱な柔順に返らしめた。
「堪忍して下さいな」下手に出られて、なおそれを根にもつほど悪人でもなかった。
「ほんとに気をつけて下さらないと困るわ」
それに加勢するようにお幸は煙管の金色を閃かして莨をはたいた。時子はさも世界にこれほど厭らしい、憎悪に堪えぬ生物はないかのように茂子を五分間許りも睨みつけていた。三人の女の客のない暇な間に湧き生ずる不平な倦怠の感情が、茂子一人に異常な憎悪を集注して消費の路を発見していた。彼女らは明らかに意識して自分達の虐げられている現実を知ってはいない。しかし純な少女の心と肉が今の様な状態に魂も肉体も変えるまでには無意識の裡に数知れない苦痛と悩みを忍耐して来たに相違はない。