轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ちじょう
地上
島田 清次郎
地に潜むもの
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 175,250 字 · 350 页
「いいえ」と言ったが冬子は当惑した。そして起きあがった。昨夜感じた自分の「侮辱」の感に対しあまりに見苦しい自分の失策である。それにしてもこの厭味のない温かさをどう享け入れよう。(ああ、それにしても、一つ蚊帳に寝ながら、ある一事を強いられないうれしさよ。)彼女は恥と悦びとを同時に感じて自分の部屋に去った。彼女が化粧をすまし着物を着替えて、朝の新しい茶をもって座敷に帰って来ると、彼ももう起きて「山岳」のように坐っていた。窓外は一面の乳色の川霧が森林の上層を速やかに流れていた。
朝飯もすまさないうちに訪問の客があった。市長、県会議員、市内の有力な実業家という人達が一日中をこの別荘の広間に過ごした。冬子はそれらの人達をもてなすうちにも彼等に対する彼の態度を注意深く見戍っていた。まるで彼は一日中を行ない澄ました修行者のように寝そべっているのだった。訪問が一しきり止む閑には女中に足から腰の辺をもまして、静かに瞑目している。そうして一日が暮れた。その夜、彼は女中にビールを命じて冬子を相手に静かに浅く酌み交わした。そして夜は前夜のように死んだような沈黙と静けさであった。