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ちじょう

地上

島田 清次郎

地に潜むもの

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 175,250 字 · 350 页

青空文庫

己が自由にしてやる。東京へ一緒に来る気があるか」

「――行きます。何処へでも、何処へでも行きます――」

「――」

「しかしあなたには立派な奥様も立派なお坊っちゃまもいらっしゃるではありませんか」

「己には妻子はある。しかしお前も必要なのだ」

「――?」

「妻の代りじゃない。妻とは別なお前だ。お前はお前で己には無くてはならぬ一人になったのだよ」

次の朝、古龍亭の若い主婦さんに冬子の「身受け」が託せられた。春風楼へ楼主にすぐ来るように電話がかけられた。酒で眼を充血さした楼主がやって来た。冬子は主婦さんが楼主と交渉するのを襖を隔てて聴いていた。

「ほかでもありませんの。大変突然ですが、天野の旦那様が――冬子さんのお客様のことですよ――冬子さんの身の立つように世話をしてやろうということになりましたの。それであなたの御都合さえよろしければ明日にでも、早く話を決めてしまいたいと仰っしゃっていらっしゃるのですから。どうでしょうかしら。今日来て戴いたのはそのためですの」

「ほう」と楼主は驚いたようだった。「それはまあ結構なことで」

「それでね、つまりあなたの方の御都合はどんな工合なんですの。