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ちじょう
地上
島田 清次郎
地に潜むもの
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 175,250 字 · 350 页
あるときはお信が懐妊して三月足らずで流産したとき、容太郎はその闇から闇へ往く生命が誰の子であるかを考えて狂いそうに悩みつづけた。「あなたの子よ。容太郎さん」お信のささやきを彼はぶちこわすように、「罰だ、罰だ! 誰の子だか分るものか」と考えた。そして同じお信の口から父の伝右衛門に、「旦那様、可哀いいことをいたしました」と言っている様子を想像すると堪らなくなった。こうした暗いじめ/\した恋であったが、何も知らずに伝右衛門が死んだ後に、容太郎とお信は忌わしい体感とともに残されたのであった。伝右衛門の死は二人に恐ろしい罪を犯していることの恐ろしさを、ひし/\と身にこたえしめた。一人にとっては実の父であり、一人にとっては実の夫であり、またその一人一人が実の叔母と甥である二人がこうまで愛し合わずには生きていられない事実。
伝右衛門の死後何よりも容太郎の結婚問題が北野家に燃え上った。伝右衛門の遺書にはお信の兄であり、容太郎の母の兄である青木の家の二女のお里を貰ってくれとあった。そしてその第一の主張者はお信自身であったとは。
「お里さんを貰った方がようございましょう」