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ちじょう

地上

島田 清次郎

地に潜むもの

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 175,250 字 · 350 页

青空文庫

「大河君、そう心配しない方がいいですよ、え、大河君」深井はいつもこう言わずにいられなかった。

それは、学校からの帰り路で、第二学期の試験の最終の日の午後、十二月下旬の細い乾いた雪がちら/\靴先に降りかかっていた。平一郎はしおれているように見えた。深井は幾度もためらいながら、平一郎のこの陰鬱と無気力を見捨てて置くわけにも行かないと思った。二年来嘗めつくした片恋の苦痛が、今、平一郎の苦痛を体験させ、そしてその片恋の苦悩を脱却するための文学への転換を彼は同じように「救済」として平一郎に説こうと幾度も思ったことだった。彼はおずおず言い出した。

「大河君。今夜僕の家へ来ませんか。僕の知っている人の家を君に紹介しますから」

「何のために?」

「その人は僕、一年ばかりも前から交わっている人です。僕は君がその人達と仲よくすることが、君のために好くはないかと思っています――来てくれませんか。僕は悪いことは言わないつもりです」

「文学の仲間かい」

「そうですよ。学校などで想像されもしない程に自由な、いつも胸底深くに涙を湛えたような人達の群があるのです。僕はその人達によってどれ程苦しみを逃れたか知れません。