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ちじょう
地上
島田 清次郎
地に潜むもの
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 175,250 字 · 350 页
己が悪党でないことは貧乏なことから考えれば一度で分ることじゃないかしら。金に眼をくれない大悪人――そんなものは随分稀にはいるかもしれないが、金が無さ過ぎるといかな大悪人もすっかりいい加減な馬鹿になるものさね。たとえ地球を爆破して人類を絶滅し、宇宙の運行に狂いを生ぜしめようと意志するほどの超人的大悪人でも金がなくては手も足も出ないで、やがて死んで行くより仕方のないものだ位はお前にも分ろう。大分黄金崇拝者じみたことを書いたね。誤解しないように、するならするでそれもよかろう。静子、己はお前にもう一度ラブレターを書くような心理状態になっているこのままで、少し書こう。己は越中の高岡の生まれだ。己は実の両親を知らない。どうして知らないか。嘘のようだがこうだ。ある豪商の一家を想像するがいい。そこに一人息子がいたのだ。年頃になって嫁を貰ったが子がないので暫くしてその嫁を離別してさらに若い嫁をめとったのだ。その時分はもうその主人の両親は死んでいない。若い嫁に一人の男の子が生まれた。その男の子が二つの春、主人は肺患で死んだのだ。若い嫁さんは二つの孤児を抱いて孤独の生涯を守るほどに貞節でも高邁の思想の所有者でも児に対する深い洞察を伴った愛をも感じていなかった。