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ちじょう

地上

島田 清次郎

地に潜むもの

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 175,250 字 · 350 页

青空文庫

それは尾沢達が現代の勢力団に対して抱く不満のように、尾沢達に対して抱かれる次の時代の批判、不満であった。平一郎には尾沢達の周囲に漂うあの「絶望」と「暗黒」の臭気に時々堪えられなくなるのであった。それは平一郎がまだあまりに若すぎるためかもしれなかった。平一郎が彼等の年齢に達して彼等のような思想に変わりはてるかも知れなかった。しかし今は、彼は時折、尾沢達と共に同じ狂乱と感激の嵐に捲き込まれて悲しい歌を高唱する刹那においても、彼はいつまでもこうしておられないような、このままこの嵐に捲き込まれて遠い無明に押し流されては堪らないような感じを得ていた。いつまでこうして過ぎるのか、いつまでこうして絶望に沈淪していても仕方がないではないか、と彼の内心に無言の声は響いていた。しかしこれは瞬間に現われる底潮であった。尾沢や静子や山崎や瀬村や、大きい呉服店の番頭をしている若い純な商業学校出の永井やは彼にとって常に先輩的な感情を起こさせ、それらの人の生活に触れることは何んという慰め、歓びであったろう。山崎が蒼い西洋人のような眼を天空に注いで星学上の話をするときの輝く天体の偉大と不思議と、さらに山崎の浄い熱とは人生に珍しい美であった。