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ちじょう
地上
島田 清次郎
地に潜むもの
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 175,250 字 · 350 页
お光はしみ/″\心配そうに話した。こうした苦しみは話するだけで、幾分軽くなるものである。冬子はお光の話を一生懸命に聞いていた。そして話の中途から、熱心さで瞳が輝きはじめた。
「小母さん、平一郎さんを東京へお出しになったらいかがでして? ――え、そうなさいましな、ね、小母さん」
「え?」とお光は眼を見はった。本能的な母親としてのみ動いていた意識がぱあっと展けて、四十幾年の苦労を静かに堪えて来た全部のお光が冬子の言葉が意味する独り子の未来を洞察した。(決して平一郎を東京へはやれない!)
「そうなすってはいけないでしょうか。天野さんには坊っちゃまがお一人しかありませんですの。それで誰か一人、坊っちゃまのお相手をして、ゆく/\は杖とも柱ともなってくれるような人がいれば世話をしてみたいと仰しゃっていらっしゃいますの。小母さん、平一郎さんならわたしどんなにでもして旦那様に申しあげますわ。わたしのお願いですから平一郎さんのお世話をやらして下さい」
(ああ姉を奪って行った天野、冬子を奪って行った天野、間接には兄を狂わせ夫を殺し、自分達の未来を保証する全資産を尽さしめた天野、その天野は今、また自分の独り子の平一郎をも奪って行こうとするのか。