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ちじょう
地上
島田 清次郎
地に潜むもの
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 175,250 字 · 350 页
恐ろしいのは成長の後に真に人間を救う大政治家になる志を失うことだ。ならずにはいられない。ああ、自分はどうあってもこの地上から不幸な人達を根絶して、自分のために力を尽してくれる人、自分を愛してくれる人、母や、冬子や、また、和歌子や深井の喜ぶ顔が見たいのだ。さらには自分自身が自分に向って、よく生れ甲斐があったと言いたいのだ。ここまで出て来た自分である。自分はあくまで清純で正直で全力的であろう)平一郎は想いつつ黙した。
「もうこうした話は止しましょうね。何もかも承知していらっしゃるでしょうから。今夜は疲れていらしっても少し我慢して下さいね。旦那様に会って少しお話ししてた方がいいでしょうから。そして二、三日ここで方々見物してから、奥山さんに連れ立って高輪のお邸へいらっしゃった方がいいでしょう。――お玉はどうしたのかしら。随分遅いこと」
静けさが黙せる二人に迫った。平一郎は冬子にこのように沁々と物語られるのははじめてであった。彼は冬子と彼との間にあった「大人と子供」の隔てが全くとれてしまったのを感じた。母に対する心持でもなく和歌子に対する心持でもない、和歌子と母とを一緒にした心持である。