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ちじょう
地上
島田 清次郎
地に潜むもの
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 175,250 字 · 350 页
「ええ、ひる頃奥山が見えて紹介して行きました」
「学校のことは?」
「それはまだ」
「ふうむ」天野が平一郎を見て「学校は何年だったっけな」と聞いた。
「四年を終了して居ります」
「それじゃM学院がここから近くていいから、明日でもお前行ってくるがいい」そして彼は「田中に手紙を書こう」と言った。足をもんでいた粂は奥座敷から硯箱と巻紙を持って来た。天野は筆をなすりつけるようにして書き終えて封書を平一郎の前に置いた。
「明日これをもってお前自身M学院へ行ってくるといい。田中というのはわたしが以前から知っている人だから」
「はい」と平一郎は瞳を上げると、自分を火のように熱心に見つめている綾子の瞳を感じてはっとした。すると天野がじろり恐ろしいほどに睨みつけていた。「偉大な男と女」そう言ってよい天野と綾子が自分を力一杯に見つめていることは恐ろしかった。しかし、明日から新しい自由な学校へ行って勉強できることを思えば「少年の平一郎」は生き生きした歓喜と希望が湧いて来た。その浄い生き生きした感情は彼の奥深くに鬱屈しそうになる「わけの分らぬ暗鬱と恐ろしさ」に克つ力があった。彼は悦びに溢れて元気になった。