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ちじょう

地上

島田 清次郎

地に潜むもの

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 175,250 字 · 350 页

青空文庫

静かであった。黒く煤けた大釜の蓋の隙間から白い粥の湯気がすうっとのぼって、冷やかに地底の冷気に融けて、また、すうっとあがってくる。店で乱れた鬢などなでつけていた女達は、食欲も起こらなかったが「習慣にしたがって」この部屋に集まって来た。冬子はお光を皆に引き合わした一安心で、少し疲れを感じていた。朝早く起きたせいか気分が悪かった。彼女は小さい茶椀にお粥を盛って胡麻塩をかけてすすりはじめた。お幸も時子も茂子も小妻も鶴子も、まずそうに舐るようにゆる/\と湯気の白くたつ粥をもてあつかっていた。本当に空腹からうまそうに啜っているのは米子と市子の二人の少女のみであった。自然はこの酷使されている、まだ魂も身体も泥劣なことから護られている二人の少女から健全な食欲を奪いはしなかった。二人は貪るようにずう/\音をさせて啜った。冬子はその様子を悦びをもって眺めていた。卑しそうに時子は眼でお幸に二人を指して笑っていた。そして自分は顔を顰めて、ようやく一杯の粥を啜るのが大変な仕事なのであった。

「菊龍さんと富江さんは随分遅いじゃないの」

時子は自分の横の空席を流し目に見て言い出した。