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ちじょう

地上

島田 清次郎

地に潜むもの

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 175,250 字 · 350 页

青空文庫

今朝からこれを言いたくてむず/\していたのだ。

「そうね」

お幸は言った。

「望月だから、きっと、吉っちゃんと丹羽さんなんでしょう」

「吉っちゃんと丹羽さん――あのねっつりやのことだもの、遅いのは、なる程、そうねえ」

「今頃はまだ金輪際離すものかとしがみついているのさね」鶴子が大きく言って独りであはははと笑った。時子はその鶴子の口出しを軽蔑するように顔を顰めた。その様子を鶴子は見逃さなかった。

「あはははは、三味線を引くと引かないだけの区別じゃないの。まだわたしの方がどんなに正々堂々としていて立派だか分りゃしない、あはははは」

「天下御免の御娼売ですとさ」

お幸は時子に加勢して、彼女の怜悧はこうした小争闘に深入りせずに、そのまま店の方へ去った。時子も侮蔑するように鶴子を流し目に見て後につづいた。

「あはははは、碌な芸もないくせに、わたしよりは一かどえらいつもりでいるから、いじらしいじゃないの。あはははは、御自分の癈りかけているのも御存じなしにさ」

誰も答えるものはなかった。小妻も茂子も冬子も別々な想いに深い暗鬱に沈潜して笑うことすら出来得なかった。(魂なきものは幸いなるかな。