轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ちずにないまち

地図にない街

橋本 五郎

「新青年」1930(昭和5)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,139 字 · 32 页

青空文庫

多少の余裕を回復した寺内氏は、そう思いつめた末に、なかば空腹を感じながら、やっと眠りについたのである。

「俺は労働者じゃない、といって乞食ともいえないだろう、勿論職業なんてものは十年この方忘れてしまった。何さまこれで六十の坂はとうに越えているからな。しかし別に働かなくとも食うにこと欠くわけではなし、寝るに寒い思いをするではなし、もっとも汚いといえば、それは俺が食うもの、着るもの、それから寝るところだってあの通り汚いが、なあに物は考えようさ。俺はただ気ままに、食ったり寝たり遊んだり、ごらんのような工合で面白く生きてるというまでのことだ。都会というところは実によくできていて、只で何でもいうことを聞いてくれるからな。だから心配しないで、まあ酒が欲しければ酒……ああ酒は駄目なのか、じゃ煙草なら煙草、何でも好きなものをいうがいい、昨日のようにもらって来てやるから。女が欲しけりゃ女だって――少し急いで行こう、でないと飯に遅れてしまうから」

老人は歩き歩き、そんなことを寺内氏に答えた。昨夜の無料宿泊所を出て、二人はまだ暗い河岸の通りを歩いているのである。

急ぎながら、老人は寺内氏に対して、それが驚くべきいろいろな都会のぬけ裏のことを話してくれた。