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ちずにないまち

地図にない街

橋本 五郎

「新青年」1930(昭和5)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,139 字 · 32 页

青空文庫

氏は今立派な青年となった。ああなんという老人の言葉であろう、知恵であろう! 寺内氏の驚きを、老人は相変わらずはっはと笑った。そしていった。

「な、すっかり変わったじゃないか。これでも少し顔の手入れをすれば、どこへ出しても恥ずかしくない若い者だ。お祝いに昼飯はレストランにでもするかな。――その袂には一文もないかしらん。なけりゃこの辺でちょいと拾って来てもいいんだが――」

老人の言葉に氏は手を袂へ入れてみた。とどうであろう、蟇口こそなかったが、はだかのままの五円札が一枚、それほど皺にもならないで出てきたではないか!

「よう、これは拾い物だな」

驚いたのは寺内氏よりもむしろ老人といってよかった。寺内氏はただ呆然として、しばらくなすところを知らなかったのである。

「とにかくどこかで昼にしよう、金さえあればこんななりをしていたって心配はない」

老人は先に立った。氏は後から続いた。そして近くのレストランに入って、老人は一杯のビールをさえやりながら、またまた、氏に対してどんな話をしたであろうか?

「いや、なあに都会の事情に少し通じてくれば、こんなことはわけはないんだ。